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季節の草花と生き物

大暑の時期の草花と生き物

大暑たいしょ:新暦7月23日頃

夏至を境として日が短くなっていきますが、蓄えられた地熱の放出と日中の陽射しによって暑さが厳しく感じられます。そんな中でも草花や生き物は元気に命を育んでいます。
二十四節気:大暑について

季節の草花

百日紅さるすべり

その名の通り、百日以上に渡って次々と花を開かせ目を楽しませてくれます。葉が小さいので落葉が気にならず、美しい花吹雪はあっという間に土に還ります。樹皮を剥ぎ落としながら成長するので、すべすべとした木肌をしています。猿も滑ると「猿滑」の字も当てられ、花言葉のうち不用意と愛嬌は猿の滑る様から連想されたものですが、実際は猿はするすると登ってしまいます。枝振りが手ごろで強度もあるので、子どもが登るのも実は簡単です。
花言葉:雄弁、活動、不用意、愛嬌 など

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狐の剃刀きつねのかみそり

彼岸花の仲間で、彼岸花よりひとあし早く8月の声とともに林縁と呼ばれる林や森の入口や陽の差しこむ林の中で艶やかに咲きます。名前の由来には「花の見ごろには目立たなくなる葉がかみそりに似ているから」というのが共通しています。なぜ「狐の」なのかについては「狐の好む場所に咲くから」「黄色とも橙色とも言い切れない狐色の花だから」「夕暮れ時に狐火と見間違えたから」など諸説があります。
花言葉:妖艶

キツネノカミソリ

大葉擬宝珠おおばぎぼうし

江戸時代に観賞用として人気を博し、都内のあちこちの公園や庭でも涼やかな花が見られます。大きな葉を持つ擬宝珠という意味で、橋や寺社の欄干に取り付けられた飾りの擬宝珠と花の蕾がそっくりです。半日陰地と言われるところを好みますが、陽があたる場所でも水を多めにあげるとよく咲きます。観賞用としての人気の高まりとともに美味しい葉の若芽「ウルイ」のことが忘れられていましたが、春の味覚としての人気が再燃しています。出荷量第一位は山形県です。
花言葉:沈静、落ち着き、変わらぬ思い、静かな人 など

ギボウシ

季節の生き物

鍬形くわがた

兜の飾りの前立ての「鍬形」にそっくりな顎を持つこの虫は縄張り意識が強く、すぐに「角突き合わせて」しまいます。飼育箱は1匹に1つ用意しましょう。鍬形とスイカの組み合わせは暑中見舞いの絵柄としてお馴染みですが、果物類は樹液を餌とする甲虫には水分が多すぎて不向き。昆虫ゼリーの他、ミネラルを豊富に含む黒糖で蜜を作ってあげるのもお勧めです。栄養に注意してあげると越冬し、4~5年生きます。

ミヤマクワガタ

油蟬あぶらぜみ

鳴き声が油を加熱する時に出る音に似ているのでこの名があります。東京などでは「ジージーゼミ」とも呼ばれます。高価な夏の襲(かさね)に「蝉の羽」の名があるように、透けて美しいものの代表格として馴染み深い蝉の羽ですが、油蝉の羽は不透明な茶褐色。力強い鳴き声とともに、甲虫に通ずる武骨な出で立ちが子どもたちの関心を捉えてきました。同じ頃に出没するクマゼミは透ける大きな羽を持ち「シャンシャンシャンシャン」」と涼やかな鳴き声を放ちます。(写真はクマゼミ)
リンク:夏至の時期の草花と生き物 蝉

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蝙蝠こうもり

夏は子育ての季節。餌を求めて日暮れ時に元気に飛び交います。古名は加波保利(かはほり)。別名に天鼠(てんそ)と飛鼠(ひそ)があるように、日本の蝙蝠のほとんどが鼠に似た可愛らしい顔をしていて子豚のような柔らかな鼻を持っています。日本で一番種類の多い哺乳類で、人里に生きるアブラコウモリを筆頭に35種。江戸時代までは鳥類とされていました。夏の益鳥、蚊食鳥(かくいどり)の別名はその名残です。紙芝居「黄金バット」の中に夜と平和を守る良き生き物として「こうもりさん」が初登場したのは昭和5年頃のこと。何度も本や映画やアニメとなり、日本中の子どもの胸を熱くさせました。

コキクガシラコウモリ

赤翡翠あかしょうびん

全身が朱交じりの橙色で、尾羽に近い腰の部分に入る水色と羽ばたきの時にのみ見える脇の褐色が目にも鮮やかな美しい渡り鳥です。広葉樹林に住み、濃い緑の中で飛び回る姿はまさに火の鳥。「火事にあったカワセミが炎で染められた」と言われ、涼やかな鳴き声は「水恋し」と泣いているのだとも。大暑の頃は子育ての真っ最中で、ザリガニや小魚をせっせと巣に運ぶ姿が見られます。親鳥を追ってそっと近づくと、しっかりと羽ばたいてから力強く枝を蹴って飛ぶ幼鳥の姿を捉えることができるかもしれません。

アカショウビン

関連項目

参考文献