うぐいす鳴く
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季節の草花と生き物

立春の時期の草花と生き物

立春りっしゅん:新暦2月4日頃

 春告鳥、春告魚、春告草…。「春告」を冠された生き物たちの多さから、人々がいかに春を待ち望んでいたかがわかります。それは生き物たちも同様。冬を乗り越えやっと訪れた暖気につぼみを開き、恋をし、子孫を残す。にぎやかないのちの季節のはじまりです。
二十四節気:立春について

季節の草花

 春先に他の花に先駆けて咲くことから「花の兄」「春告草」ともよばれる梅。奈良時代に中国から伝えられたとされ、当時は珍しさもあってさかんに歌にも読まれました。『万葉集』には梅の歌が120首近く収められています。
 庭木や鉢植えとして鑑賞され、陽当たりのよい場所で日光をたっぷり浴びるとより多くの花を咲かせ楽しませてくれます。また旺盛に枝を伸ばすため、適度な剪定は必須。病害虫も多く、管理には少々手がかかります。
 1000年以上も愛されてきただけに、梅の名所は日本各地にたくさんありますが、特に名高いのが水戸の偕楽園です。日本三名園にも数えられる美しい園内には、100種3000本にもなる梅が植えられ、2月下旬から本格的な見頃を迎えます。
 なかでもぜひ見ておきたいのが、「水戸の六名木」と讃えられる六種類の梅の木。園内でも特に美しい梅を選んで贈られた称号で、月影、烈公梅、柳川枝垂など名前までも優雅です。梅の香りを感じつつ、園内を散策しながら六名木をコンプリート…そんな楽しみ方も風流かもしれません。

 花言葉:上品、忠実、気品 など

紅梅とみぞれ雪

沈丁花じんちょうげ

 往年の名曲でもおなじみの沈丁花。歌詞にもある通り春先に咲く花は淡いピンクと白のコントラストも美しく、小さな花が20ほど集まって手毬のようなかわいらしいまとまりをつくります。
 花は観賞用のほか、乾燥させて煎じると「瑞香花」といううがいなどの薬になります。またこの花の魅力といえばなんといっても甘く優しい芳香でしょう。最高級の香木「沈香」と、香辛料の「丁子」から1字ずつとって「沈丁花」になったとも。どちらも香りの良さをあらわしています。
 適度な大きさと春先の芳香から庭木や植え込みにも好まれていますが、ある程度の大きさ以上になると植え替えのストレスに耐えられなくなるため、大株の移植は困難。小さな株からコツコツと育てていきましょう。比較的寒さには強いのですが、なるべく陽の当たる暖かい場所に植えてあげるとよりよく花を咲かせます。

 花言葉:栄光、不滅 など

沈丁花

桜草

 桜の花びらによく似た五弁の花を咲かせ、一花桜(いちげざくら)とも。日本各地に自生する山野草でしたが、江戸時代以降観賞用の園芸植物として栽培されるようにもなりました。
 園芸品種となったきっかけは、一説には鷹狩りをしていた徳川家康がその美しさを愛でて持ち帰ったことといわれます。そのためか江戸時代には特に武士階級に広く愛され、三代将軍家光は園芸サクラソウの品評会を開くほどだったとか。
 江戸時代の武士たちの「趣味の園芸」への熱中ぶりはなかなか本格的で、今も見られるサクラソウの品種の半数近くがこの時代に生み出されたものです。江戸期後半には武士による園芸愛好サークルも多く結成され、大名庭園には植木鉢を育てるための温室まで設えられるほどでした。
 栽培種としては大繁栄のサクラソウなのですが、現在天然の自生地は激減し、たいへん貴重になっています。推定100万株ものサクラソウが自生するさいたま市の田島ヶ原自生地は国指定の特別天然記念物。貴重な自然種を保護するとともに、傷つけずに観察できるよう柵や見学路も整備されています。埼玉県の花、さいたま市の花にも選ばれています。

 花言葉:初恋、青春の歓びと悲しみ、愛情 など

野生の桜草

野生の桜草


季節の生き物

うぐいす

 春告鳥、花見鳥など風雅な名前をもつ春の代表的な鳥。
 代名詞ともいえる「ホーホケキョ」は春の繁殖期にオスだけが鳴くもので、谷渡りという「ケキョケキョ」の鳴き声は警戒音、「チャチャチャ」は最もよくきかれる地鳴きで、笹鳴きとも呼ばれます。
 ウグイスは鳴き声を楽しむ飼い鳥としての長い歴史を持ち、15代応神天皇の頃にはすでに育てる人がいて天皇に献上されたという物語が残っています。
飼育熱がヒートアップしたのは江戸時代で、将軍のため鳴き声のよいウグイスを育てる「お鳥掛(かかり)」という職がわざわざ設けられたほど。将軍家にも縁深い上野寛永寺の門主も大のウグイス好きだったのですが、京都出身の皇族である門主にとって上野のウグイスは「江戸訛り」がひどくて野暮。そこでわざわざ京都から数千羽のウグイスを取り寄せて寺の周りに放ったところ、ようやく門主好みの京風のさえずりをするようになったとか。
 この逸話が由来となっているのが上野のお隣、「鶯谷」という地名です。うららかな春、上野公園に繰り出して雅なウグイスの鳴き声を確かめてみるのも、面白いかもしれませんね。

うぐいす佇む

メジロ

 スズメよりも一回り小さいかわいらしい鳥で、昆虫なども食べますが大好物は甘い物。春先には椿や梅といった花の蜜を好んで吸って回ります。
 よく「梅に鶯」と春の風流の代表のように言いますが、実物のウグイスは絵に描かれるようなウグイス色ではなく、灰色味の強い沈んだ緑色。綺麗なウグイス色をしているのはこのメジロのほうで、さかんに梅の蜜を吸いに集まるメジロがウグイスと見間違えられた可能性もあるようです。実際、鮮やかな緑色でチョンチョンとよく動き回るメジロは、梅の枝によく映えます。
 何かが混み合っている様子を「目白押し」といいますが、自然界でメジロが目白押しに集まることはまずないそう。メジロは声を楽しむ鳥として捕獲されることも多く、捕まえられたメジロが鳥かごのなかにぎゅうぎゅうに押し込められた様子をみて言われ始めたのではないかとされています。ちょっとかわいそうですね。「満員電車に目白押し」というような使い方が、いちばん語源にかなっているのかも。

メジロと河津桜

メジロと河津桜

ケラ

 ケラは春先から秋にかけて活動するコオロギの仲間の昆虫です。
 モグラのような立派な前足を持ち、土の中を自在に掘り進むことができる珍しい虫で、英語名のMole cricketはそのものズバリ「モグラコオロギ」という意味。生態もモグラ同様に大食らいで、雑食性で小さな昆虫からミミズ、草の根までなんでもよく食べます。このため、農家では根菜や野菜の根をかじる害虫として嫌われてきました。
 また大きな前足は土を掘るだけでなく泳ぎにも向き、春、水の張られた田を泳ぐケラの姿もしばし見られます。地面を歩くのはもちろん、一見貧弱そうな羽を開いてよく飛ぶことも知られ、陸・水・空・地中とオールフィールドに活動できる昆虫界イチ融通の利く生き物なのです。
 地中ではジージーとよく鳴きますが、このケラの声はながくミミズの鳴き声だと信じられていました。「ミミズ鳴く」は秋の季語ともなっています。

ケラ

関連項目

参考文献