秋分
音で気づく、秋の深まり。虫の音楽隊がどんどん編成を変えていきます。虫の音を音楽のように左脳で聞くのは中国人と日本人だけと言われています。西洋人は特に、他のアジア諸国の人も、雑音として右脳で聞き流してしまうそうで「綺麗な音だよ」と教えられて初めて、音楽に聞こえてくるのだそうです。とても不思議ですね。
二十四節気:秋分について
季節の草花
金木犀
強く甘い香りが漂い始めます。鮮やかな黄~橙色の小さな花を咲かせます。江戸時代に渡来しましたが、それより早くに渡来していた白い花の木犀が銀木犀と呼ばれるようになるほど人気を博しました。その強い香りは、人家の少ないところでは「香りを辿れば家に着く」と言われました。厠の臭い消しにも相性抜群で、厠付近にもよく植えられました。
花言葉:謙虚、謙遜、真実、初恋、陶酔、真実の愛 など
紫苑
薄紫の優しげな花がまとまって咲き、見ごろを迎えます。別名の鬼の醜草(おにのしこぐさ)。180cmほどにも背丈が伸びるため、大きな・凄いという意味で鬼の字があてられたと考えられています。こんなに可愛らしいのに醜草とされた理由はわかっていません。もう1つの別名が十五夜草。満月の頃に見ごろと言う意味です。キク科の栽培種で、古くに栽培されたと思われる「自生」は九州の一部でしか確認されていません。
花言葉:君を忘れず、遠方の人を思う、思い出、追憶 など
銀杏
髷の名でもお馴染みの特徴的な葉が、鮮やかな黄色に染まり始めます。葉の形から鴨脚樹とも書きます。全国で最も多い街路樹で、澄んだ空に美しく映える黄葉(こうよう、おうよう)の名所が多数。「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」の言葉があるように剪定は難しいものですが、銀杏はいつ誰がどのように切っても真っ直ぐに美しく伸びていきます。太古から生き続ける、生きた化石と言われる強い木です。
花言葉:長寿、荘厳、鎮魂、しとやか、詩的な愛 など
蕎麦
小さな可憐な花をたくさん咲かせます。花色は白が多く、淡紅~赤も。縄文時代から栽培され、やせ地でもよく育ち、何度も飢餓を救いました。茎が赤いわけが昔話となって各地に残っています。「川が渡れずに困っている老人を背負って水が冷たいのを我慢して渡ったところ、蕎麦の足(茎)が真っ赤になった。老人は神様で、夏の太陽の下で短期間に育つ、愛される植物にした。」という優しいお話です。
花言葉:あなたを救う、懐かしい想い出、喜びも悲しみも
季節の生き物
蟋蟀
蛬、蛩、蛼も正字。 主字の蟋蟀は、中世までは鳴く虫全般を指す文字でした。古い書物に登場する蟋蟀がコオロギであるか否か定かでないものも。雑食のものが多いですが、虫や小動物の死体も好んで食べます。物語には優しい役割で出てくることが多いですが、勇ましい姿と強い顎を持ち、共食いまでする食事風景はなかなかワイルドです。
鈴虫
野生種は水始涸の頃が聴き納め。平安時代から愛され続け、江戸時代には大々的に飼育が始まり、虫売りが天秤棒を担いで売りに来るのが風物詩となりました。「リーーン」の伸びる音には小さなrがたくさん入り、単純でありながら聞き飽きない音楽を奏でてくれます。鰹節や桜エビをすり潰した粉などを餌に加えると、共食いが防げます。
リンク:処暑の時期の草花と生き物-松虫
馬追
萩の叢を好みます。可愛い姿をしているのに気が荒く、捕まえようとすると噛まれるのでご注意を。作物を荒らす虫もバリバリと食べてくれる少々暴れん坊の益虫です。鳴き声が馬子が馬を追う時の掛け声に似ているからこの名が付いたとされています。畑の馬追は「シッチョン、シッチョン」、林の馬追は「スイーーッチョン」と長く鳴きます。
鴫
田にいるのをよく見かける渡り鳥。田鴫(たしぎ)を指すことが多いですが、秋に飛来するのはシギ科だけで30種を越え、属も約20種。標準とされるのはヤマシギ属。その代表種のヤマシギは「山鷸」と書き、この鷸は中国から来た文字。山鷸は適合性が高く、留鳥の地域もあります。「しぎ焼き」はこの山鷸のことで、鳥獣の食が禁止されていた時代に茄子を掘って山鷸を詰め「これは味噌を焼いたものです」と言い張ったことが元という説も。
猪
関東以南の山林に数多く生息しています。通常は春に出産しますが、秋にも出産することがあります。猪はとても神経質で、通常は人間を見ると逃げて行きますが、母猪はまさに猪突猛進。縞模様の子ども「うり坊」はとても可愛いですが、万一見かけても触らず近づかず、そっと離れましょう。茸は猪の大好物なので、茸狩の際は特にご注意を
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