小寒鶴
Column

季節の草花と生き物

小寒の時期の草花と生き物

小寒しょうかん:新暦1月5日頃

 春の七草と秋の七草、知名度では春に軍配が挙がるでしょうか。「セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ これぞ七草」と五七五でテンポよく覚えられるのもありがたいところ。万葉の時代までさかのぼる歴史ある七草を中心にこの時期の草花や生き物をみていきましょう。

二十四節気:小寒について

季節の草花

春の七草

 「君がため春の野に出でて若菜摘むわが衣手に雪は降りつつ」
 百人一首にとられた光孝天皇の歌にも詠まれている「若菜摘み」の行事が現在の七草の起源とされます。新春、野に出て芽吹いたばかりの若菜を摘んで歩く若菜摘みは万葉の時代か更に古くから歌題に好まれていますが、その内容の多くは男女の恋模様を絡めたもの。
 「若菜を摘むお嬢さん、あなたの名前を教えておくれ」、
 「あなたのような勇ましい方が私のために菜を摘んでくださるなんて、なんて親切なんでしょう…」など。
 若菜摘みはただの食材集めではなく、若い男女がおおらかに気持ちを歌い交わす出会いの場であったのかもしれません。七草粥の風習は平安期に始まり、一年で最初の節句人日の祝いとして一般に広まったのは江戸時代といわれています。

春の七草

春の七草


せり

 春の七草のうち唯一『万葉集』に名前がみえるのがセリで、『延喜式』という平安期の書にもセリを栽培し漬物にして食べていたことが載っていますから、日本人はずいぶん古くからセリを食材として用いていたようです。
 こうした歴史から七草の筆頭にも数えられるセリですが、野摘みで厳重注意しないといけないのがドクゼリとの間違いです。別名オオゼリともいわれるドクゼリは、名前の通り草全体に猛毒を含み、口にすると嘔吐、痙攣、呼吸困難など命に関わる重篤な症状があらわれます。トリカブト、ドクウツギとともに日本の三大毒草ともいわれるほど怖いものですので、鑑定に自信がなければ安全を優先し、セリ摘みはスーパーの七草コーナーにお任せしましょう。

花言葉:貧しくても高潔 など

芹の花

芹の花


なずな

 三角形の実の形から、三味線草、ペンペン草とも。実をつけたなずなを振ると三味線のような音が鳴るからだとも言われます。俗に焼け野原になることを「ペンペン草も生えない」というように、他の草がまだ芽を出さない枯れ野のにもいちはやく若苗を伸ばします。きれいな放射状に広がった生え始めの芽は七草粥に、陰干しして煎じたものは肝臓病や血のめぐりに効く漢方となります。

花言葉:あなたに全てを捧げる

ナズナの花

ナズナの花


御形ごぎょう

 原産地はインド、中国あたりと考えられていて、日本には農耕の伝来とともに伝わってきたようです。元祖帰化植物といったところでしょうか。繊維質で苦味が強く、テンプラにすると美味とされていますが、逆に七草粥に入れるときは分量要注意。草餅にごぎょうを使う地域もあります。
 七草では語呂のよさもあってごぎょうの名で知られますが、植物名としてはハハコグサの方が正式。

花言葉:優しい人、あたたかな気持ち

ハハコグサの花

ハハコグサの花


繁縷はこべら、はこべ

 ナデシコ科の多年草で、春先に白く小さなかわいらしい花を咲かせます。どこにでも自生するたくましい草花で、七草に入れるコハコベのほかにも、人里によくみられるやや大ぶりのウシハコベ、山間部に生えるサワハコベや、これも白い花が美しい高山植物イワツメクサなどがハコベの仲間として知られています。
 草全体が柔らかいため、ウサギや小鳥など小動物のエサにも向いています。昭和の中頃までは、放し飼いにされたニワトリが庭に伸びたハコベをつつく姿もよく見られたものです。

花言葉:愛の密会

ハコベの花

ハコベの花

仏の座ほとけのざ

 タンポポのように根付きの葉を放射状に広げた様子が仏様の台座のようだということからの命名で、正式な和名はコオニタビラコ。紛らわしいことに、オドリコソウによく似た全く別種のホトケノザという植物もあり、こちらについては有毒だとの説もあるので注意が必要です。とはいえ、七草のホトケノザのほうも、食べられないことはないけれど、お世辞にも美味いとはいえない…という程のお味のようで、七草の日以外は、寒い冬に懸命に葉を広げる姿を眺めて楽しむのが正解かもしれません。

花言葉:調和

コオニタビラコ

コオニタビラコ


すずな

 蕪は『万葉集』に「あをな」として登場するほど古くから日本にある野菜ですが、原産地は遠くアフガニスタンか地中海あたりといわれます。すずなも蕪の古名ですが、「あをな」「すずな」の語感からもわかるように古くは青菜であって、葉物野菜のうちに数えられていました。実際に栄養分も葉にたっぷり含まれているので、七草に限らず、すずなの葉は捨てずにしっかり頂きましょう。
 ふだん根だと思って食べている白い丸いところは「胚軸」という部位になり、本物の根っこはその先にちょろりと伸びているあの部分です。

花言葉:晴れ晴れと、奉仕 など

蕪の花

蕪の花


蘿蔔すずしろ

 すずしろ(清白)は大根の古名で、きもちいいほどの根の白さを表すとも。『古事記』に名がみえるほど古い野菜なのですが、世界的にみると栽培のはじまりは古代エジプト時代といわれます。日本どころか、世界最古の野菜のひとつであることは間違いなさそうです。
 蕪同様に七草でいただくのは葉の部分。大根の葉は味もよく、栄養価にも富んだ立派な葉物野菜です。根にはビタミンCと消化酵素のジアスターゼがたっぷりで、大根を適度に摂取しているとお腹を壊すことがありません。ここから「大根は中(あた)らない」→「当たらない役者は大根役者」といわれるようになりました。大根の実力からすれば、一人二役とか、主役をおびやかす名脇役、くらいの意味にしてあげたい気もします。

花言葉:適応力 など

大根の花

大根の花


季節の生き物

きじ

 本物を見たことがなくても、お札の絵柄や昔話の登場キャラクターとしてお馴染みのキジを知らない日本人はいないでしょう。日本の国鳥にも指定されるほど親しまれるキジは、肉も美味しく、オスの羽毛の美しさもあって古くから狩猟の対象として狙われる鳥でもありました。
 キジが国鳥に指定されたのは、まだまだ鳥獣保護という観念の薄い昭和22年のこと。この年にバードデー(愛鳥日)が制定されることになり併せて国鳥の選考も行われたのですが、キジに決まった訳は、ひとつには日本の特産種で本土ならば広くどこでも見られること。そして、「焼野の雉子、夜の鶴」のことわざがあるように、たとえ周りが火事になっても卵を温めるのをやめないほど母性愛の強い鳥だと考えらえていたことにあるようです。

雉のオス

 鶴といったとき、大抵の日本人が思い浮かべるのはタンチョウヅルでしょう。タンチョウは極東地域に生息する大型の鳥で、日本には10月頃から冬にかけて避寒にやってくる渡り鳥です。日本国内で自然にみられる鳥としては最大級で、見た目の端正さ、美しさからも瑞鳥として愛されてきました。
 現在タンチョウの飛来地は北海道が主で、なかでも釧路は特に有名。釧路湿原や阿寒の国立公園には観察スポットも用意され、タンチョウを驚かせずに観察し、撮影もできるよう整備されています。立ち姿、羽ばたく姿、群れ、単独…何をしてもサマになる姿は、さしずめ鳥界のプリンス、プリンセスといったところでしょうか。

タンチョウヅル

タンチョウヅル


関連項目

参考文献