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季節を楽しむカメラ術

秋の虫〜爽やかな季節だからこそ昆虫写真にチャレンジ!

1アキアカネ

アカトンボの代表選手「アキアカネ」 60mmマクロ f2.8 1/1600秒

夏の強烈な日差しも和らぎ、過ごし易い季節がやって来ました。
これは多くの虫たちにとっても言える事で、いわゆる「夏枯れ」が終わり植物が元気になると、それに集まる昆虫も多くなります。
せっかくの撮影日和ですから、一味違う写真を撮りに出掛けましょう。

これがあると便利

あると便利な機材は、接写が出来るように設計されたマクロレンズで、中でも中望遠マクロと呼ばれる35mm換算で100mm前後の焦点距離を持つものが、ワーキングディスタンス(撮影距離)が取れるために使い易いでしょう。また、最短撮影距離が短く設計された魚眼レンズや、広角レンズがあると秋の紅葉など、背景も一緒に写し込めるため季節感溢れる写真が撮れます。
コンパクトカメラでも接写が可能な機種ならば、深い被写界深度を利用して手軽に撮影出来るので、入門にはもってこいですよ。

まずは定番マクロレンズ

マクロレンズで昆虫のように小さな被写体を撮影すると、どうしても被写界深度が浅くなってしまいますが、ピントは眼にしっかりと合わせるようにしましょう。
次の動きを読む事も大切で、行動パターンを良く見ていると気に入った花に何度も止まろうとする個体に気が付くはずです。実は撮影の技術と同等以上に、そうした撮影し易い相手を見付けるのが大変重要なポイントとなります。次に来る場所が分かれば予めAFでピントを合わせて置き、止まる直前から連射をすれば時には飛んでいる被写体も写し止める事が出来ますよ。
フイルム時代からカメラを使っている方は連射を躊躇してしまいがちですが、デジタルならではの利点を生かしてどんどんシャッターを切り、最高の1枚を手に入れて下さい!

コスモス畑の「モンシロチョウ」 止まる直前から連射

2モンシロチョウ
60mmマクロ f3.2  1/3200秒

60mmマクロ f3.2 1/3200秒

バラ園の「アキアカネ」
必要以上に絞り込まない事で背景を美しくぼかす。飛んでも、お気に入りの花に戻って来るため、予め置きピンをして止まる前から連射。

5アキアカネとバラ2
100mmマクロ f4  1/1600秒

100mmマクロ f4 1/1600秒

魚眼レンズでの撮影にチャレンジ

魚眼レンズを使って思い切り被写体に近付いて撮影すると、背景も大きく写りこむため環境を一緒に写し止める事が出来ます。
昆虫は小さいので撮影距離を20cm以下にしなければ、画面上で点のような大きさになってしまうため思い切って近付く事が一番のポイントです。この時のレンズ先端から被写体までの距離は5cm以下になる事が多いため、相手に逃げられない事と自分の影が画面に入らないように気を付けて撮影しましょう。また、この場合はマクロレンズと異なり、ある程度絞り込んで被写界深度を稼いだ方がより立体感のある仕上がりになります。
ストロボを、ごく弱めに発光させてレフ板代わりに日中シンクロを行うと美しい仕上がりになります。

6ヤマトシジミ

色付いたイチョウを背景に撮影した「ヤマトシジミ」
魚眼8mm f13 1/400秒

日中シンクロで明暗のバランスを取る 「ウラナミシジミ」 魚眼8mm  f13  1/400秒

日中シンクロで明暗のバランスを取る
「ウラナミシジミ」 魚眼8mm f13 1/400秒

コンパクトカメラを活用する

多くのコンパクトカメラは、小さめの撮像素子を用いているために被写界深度が深いという特性があります。これを昆虫の撮影に生かさない手はありません。出来るだけ最短撮影距離が短くて、絞りやシャッター速度が自分で選べる機種ならば、びっくりするくらいの活躍を見せてくれるはずです。

連射を利用して飛び立つ瞬間を捉える「アオスジアゲハ」
こうして広角側で接写をすると、魚眼レンズと同様に背景も写し込める。
8アオスジアゲハ

4.5mm f2.8  1/2000秒

4.5mm f2.8 1/2000秒

虫”撮”りに行こう

昆虫写真は敷居が高そうに感じるかも知れませんが、デジタルの時代になり撮影枚数が飛躍的に増えた上、手ぶれ補正の機能も入り、とても身近な存在になっています。この秋は、ぜひ足元の小さな仲間に目を向けて下さいね!

Author Profile
黒柳 昌樹(くろやなぎ まさき)

1969年東京生まれ。
沖縄の八重山諸島を主なフィールドとして教育用の動植物や自然写真を撮影する傍ら、
広告写真も手掛ける。幼少の頃から自然や昆虫に興味があった事もあり、蝶をはじめとする
昆虫の飛翔写真に力を入れている。
現在、オリンパスの写真投稿サイトFotoPus(フォトパス)の虫コミュ管理人としても活躍中。
SSP日本自然科学写真協会理事。
URL http://www.h5.dion.ne.jp/~yaeyama