小満
のびゆく青葉と爽やかで時に強い風は「小満の目印」。七十二候はすべて中国伝来のものとは異なる日本独特のものです。人々が愛でた日本中のあちこちで見つかるこの時期に見ごろを迎える草花は中国から伝来したものが多く、出会いと活動を迎える生き物たちも共通しています。
二十四節気:小満について
季節の草花
紅花
古名は呉藍(くれのあい)のほか、源氏物語登場する姫の名として有名な末摘花(すえつむはな)があります。この「末」は「花びらの先っぽ」の意味ではなく、貴重な紅の元となる花が「強い棘をよけ、痛い思いをした末にようやく摘みとれる」ことから来ているという説もあります。花言葉が全て、紅を作るために必要な気持ちであるのは気のせいでしょうか。
花言葉:寛大、包容力、情熱、愛する力 など
鈴蘭
葉の陰に隠れうつむくように咲く花の姿に「君影草」の別名も。和名のスズランは、神事で使う棒の付いた鈴、能や狂言などでシャンシャンと鳴らす鈴に似ていることから、古くからこの名で呼ばれています。学名の「Convallaria keiskei」の「keiskei」は、明治初期の植物学者伊藤圭介博士の名前からつけられています。
花言葉: 幸福の約束、意識しない優しさ、純粋、純潔、謙遜、媚びなど
雛罌粟
丘で占ったり、坂にあったり。今を生きるすべての日本人にお馴染みの花、ポピーです。今も別名として残る虞美人草(ぐびじんそう)は、項羽が最後の戦いに敗れる時、虞という美しい妃が自刃して殉じ、翌年妃のお墓に赤いヒナゲシが咲いた…という古代中国の史実から生まれたお話に由来しています。コクリコはフランス語音で、一番新しい読み方です。
花言葉: いたわり、思いやり、忍耐、(赤)慰め・感謝、(白)忘却・眠り など
季節の生き物・鳥
蚕
中国で5000年近くも前に量産・家畜化された虫で、蛾になっても飛ぶことができません。幼虫である蚕は、餌がなくなっても逃げださずに困っているだけで、人の手がないと生きていくことができません。「お蚕さま」の呼び名は、高価な絹をもたらしてくれる大切な生き物であることと、手をかけ慈しまなければ命絶えてしまうそのはかなさへの愛おしさをあらわしています。
天道虫
上へ上へと登り、必ず「お天道さま」に向かって飛び立つ姿がそのまま名前に。「紅娘」と書いてもテントウムシと読みます。アブラムシ・ハダニ・カイガラムシなどの害虫を食べる肉食種が多いため、益虫の代表格として、姿かたちと共に愛されてきた人気者です。草食種は害虫となるため、学術的区別ではありませんが「テントウムシダマシ」とも呼ばれます。甲羅に艶がないのが特徴です。
四十雀
黒い縁取りと鶯色の肩掛け、羽を閉じた時の太い縞が可愛らしい、雀ほどの大きさの鳥です。人の家の植木鉢の中などにも営巣してしまう比較的人なつこい鳥です。綺麗な水を好むため、近年では少なくなっている人里が多いと思われます。4月~7月に繁殖期を迎えるので、5月には「ツィッピー、ツィッピー」という恋のさえずりと、名前の元となった地鳴き(普通の鳴き声)の「ジジュゥ、ジュウ」の両方を聞くことができます。
- 新版 美麗写真でつづる 日本の七十二候 晋遊舎
- 二十四節気と七十二候の季節手帖 山下 景子著 成美堂出版