日本の四季を代表する風景の一つ、春の桜。世界に誇れる日本の風景の一つでもあります。
そんな季節の風景を、あなたの目線で切り取り作品として残してみませんか。
陽射しで印象を変える
春の桜を表現するには様々な方法があります。特に青く晴れた空と桜の淡い色の相性はとてもいいものです。しかし、見慣れた平凡な風景になりがちで、何度撮影しても同じような写真に見えてしまう、などという経験はありませんか?
日中の光が満遍なく降り注ぐ時間帯は影もできにくく、平たく感じてどれも同じように見えてしまいがちです。そこで、時間帯をかえて撮影に出かけてみましょう。朝日や夕日の見られる時間帯は斜めからの光と、そこにできる影のコントラストはとても綺麗で、それに加えてこの時間帯ならではの太陽の色で、全体の色味が増してきます。
夕方は人や車の通りも多く、捉えたい構図で撮影しにくいことが多いので、まずは朝日を狙ってみましょう。東の空から太陽が昇り始め、あたりが明るくなり、桜の花々がキラキラし始めたら撮影開始です。この時、景色を斜めから立体的に捉えると、光と影のコントラストに加えて構図としても遠近感や立体感が生まれてきます。また、全景を平面で捉えるのに加えて、少し近づき角度をつけて、さらにカメラの位置を下げて上を見上げるようにして立体的にも撮影してみましょう。
花の香りに包まれて
今度は桜へ近づいてみましょう。
日頃自分が見ている景色(立ち位置)よりも、もっともっと近くに寄って撮影すると、桜の花びらや淡い色の表現がより一層際立ち美しさを増してきます。この時、マニュアル撮影や露出を設定して撮影出来るカメラであれば、絞り値を出来るだけ小さくして撮影すると、ピントのあった部分の前後がボケやすく、さらに雰囲気が増してきます。
ボケをうまく作るには、狙っている花の前後にボケるものがあることが必要になります。満開の枝のわずかな隙間から少し後ろにある枝をそっと覗いてみましょう。覗き込んだ手前の花がうまくボケて、隙間の向こうの花の周りを囲んでくれます。この時も光を意識して、逆光をうまく利用すると、柔らかいボケに加えて、花びらの透過した部分と影になる部分のコントラストが生まれ、周辺のボケの中に凛とした一輪の花びらが生きてきます。
ボケをうまく利用するには、絞りの小さなレンズ、つまりプロが使用している高価なレンズでなければうまくボケないんじゃないか?という声をよく聞きます。
確かに絞りの最小値(開放値)はボケに大きく左右しますが、それだけではありません。
ボケをつくるには、ピントの合った位置の前後にうまく何かを配置することで作りだせるのです。さらに、レンズの構造上これ以上近づけない(ピントが合わない)という位置まで近づくことで、そのレンズが持っているボケを最大限引き出すことができるのです。
可能な限り近づいて手持ちの機材の良さを十分引き出してあげましょう。ただし、近づく際には枝を折ってしまったり、花を痛めてしまわないように十分気を付けましょう。美しい景色を撮影できるのもそこに生きる自然のお陰なのです。自然に対する感謝の気持ちは常に忘れないでおきましょう。
旅の記録にランドマーク
この季節に外に出かけると、行った先々で様々な種類の桜を目にすることができます。ちょっとしたお出かけや旅行に出かけた際に、その場の象徴(ランドマーク)となるものと桜をうまく合わせて切り取ってみましょう。
桜とランドマークの両方を入れた風景というのは、みな知らず知らずのうちに旅の記念として撮影しているものです。そんな写真に加えて、その場の雰囲気のさらに気に入った所を部分的に切り取って作品にしてみましょう。
桜をあえて背景にしてみるのも面白いものです。
例えば、参拝に行った神社の鳥居を主役に、背景を桜で埋めることで、この季節ならではの風景となります。あくまでも主役は鳥居なので、ピントは鳥居に合わせます。その場の象徴となるものの背景として桜を使えるのも、この季節ならではの醍醐味でもあります。きっと桜が名傍役になるでしょう。
桜の中でも独特な形をしている枝垂桜はなんとも言えない風情があります。空へ向かって枝が伸びるほかの種類の桜に対して、枝が地面に向かって垂れ下がっているので面白い切り取り方ができる桜です。日本庭園の中庭などにある枝垂桜に出会ったらチャンスです。
木の根元から曲がりくねった幹と、上から垂れ下がってきている枝花は、周りの石や通路、石畳などと合わせてみると、とても面白い作品になります。
周りの建物などはあまり多く取り込みすぎないようにして切り取ってみましょう。
躊躇せず思いっきり切り取るのがコツです。
笑顔と桜の思い出
桜の咲く頃は、私たちの生活にも様々な変化が訪れます。様々なお祝い、記念、イベント等々、そこにはたくさんの笑顔があり、時に涙があり春の桜とこの時期の記憶はずっと心に残っているものです。
思い出となる家族や仲間と過ごす時間は何物にも変え難いもので、そんな瞬間の写真は記憶という素敵な作品となるものです。家族や仲間が気がつかないように、そっとカメラを向けてみましょう。自然の中に溶け込むような素顔は心に残る一枚となるでしょう。
人を撮影する場合、気をつけておかなければならないのが肖像権です。
家族や仲間を撮影する場合は、あらかじめ撮影の承諾は得やすいものですが、多くの人が集まるところでそこにいる人を撮影する場合、一言声をかけて撮影をしましょう。
もし、作品展やインターネット上で公開する際はその旨も説明して承諾を得ておきましょう。
モデルリリース(肖像権使用許諾同意書)などの同意書にサインをもらっておくと、お互いに気持ち良く撮影できるでしょう。モデルリリースに関してはインターネットで検索すれば詳細がわかります。いかなる場合であっても、気持ちよく写真を撮ることを考えると、これらの権利に関しては知っておいてもよいものです。
笑顔で声をかけてきちんと説明すれば、ほとんどの方が快く承諾しくれるものです。
桜、舞い散る
綺麗な花にも必ず散る瞬間がおとずれます。その瞬間は、満開の美しさにも負けぬほどの魅力があると思います。
「桜吹雪を撮ってみたい!!』と思っている人は多いのではないでしょうか。
テレビやインターネットのお花見情報や天気予報を確かめて、満開が過ぎたら風のある日や時間帯を狙って出かけてみましょう。
桜吹雪や散る花びらを撮るにはちょっとしたコツが必要です。
背景をうまく利用しないと淡く小さな花びらは綺麗に写せません。背景が暗くなるように構図を決めてカメラを三脚に固定し、レリーズやリモコンを使ってシャッターを切れるようにします。連写機能のあるカメラなら、その機能を使ってみましょう。
ピントはオートにせず、合わせたい枝や位置にマニュアルで固定(置きピン)します。
シャッタースピードは、早ければそこに移る花びらはまるで止まっているかのように写り、遅ければ花びらの動きが軌道となり、春の風を感じられる印象深い作品になります。好みのシャッタースピードで撮影できるようにカメラの設定をします。
自分の撮りたいイメージを思い描きながらカメラを設定し終えたら、あとは待つばかり。ここからは写真撮影に重要な「待つ」という根気が必要になってきます。自分の描いたシーンが撮れるまで、ひたすら「待つ」「シャッターを切る」そしてまた「待つ」の繰り返しです。待っている間に撮った写真を確認し設定を変えられるのはデジタルの利点ですね。
桜吹雪や散る花びらを撮影するなら、三脚とレリーズを持ち、暖かいコーヒーと小さな椅子を準備してのんびり撮影を楽しむ気持ちで出かけてみましょう。
「待つ」と「根気」の先には思わず笑顔がこぼれてしまうような瞬間がきっと撮れているはずです。
春を撮りに行こう
桜が咲く時期はついつい上ばかり見て歩いてしまいがちですが、足元も見てみませんか?
道に散った花びら、春の花々、水面に漂う花びら、思わずほっとするような美しい春の景色がそこにもきっとあるはずです。春を撮りに行きましょう。