Column

お花見特集

気象予報士が教える、サクラの時期の天気あれこれ

いであ株式会社 岩本裕之
2015/2/25

サクラの「休眠打破」と開花予想日

sakura1各地の春色を鮮やかに演出する桜の花芽は、実は前年の夏に形成されます。その後花芽は寒さとともにいったん休眠状態に入りますが、冬季にある一定期間の低温に晒されることで休眠から覚めます。これを「休眠打破」と言います。目覚めた花芽はその後の気温上昇とともに成長して開花に至ります。このように、サクラの開花には、ある一定の寒さと暖かさの積み重ねが必要となりますが、休眠打破以降の積算気温と過去の開花実績の関係など、様々な統計手法を用いて桜の開花予想日が推定されます。

実際の開花のタイミングは直前の気象動向に影響されますが、本年は12月の厳しい寒さで花芽は比較的スムーズに目覚め、2月後半〜3月は北・東日本中心に余寒はあるものの、寒気の流れ込みが少なく平年より暖かく経過すると予想されるため、生長が促進し、開花は西日本を中心に平年並みかやや早まるところが多くなりそうです。
なお、開花から満開までのオンセット期間は、北にいくほど短くなるという傾向があります。その時の気象条件にも大きく左右されますが、福岡、大阪、東京などは1週間~10日程度なのに対して、北海道では3~5日くらいで満開に至ることが多くなり短期決戦型となります。

お花見期間の天気と気温のあれこれ

さて、サクラの開花寿命はもとより、お花見する私達人間側にとって最高のお花見を実現するためにも、開花期間中の天気動向はその命運を大きく左右することになります。

sakura2

冬の間優勢であった西高東低の気圧配置から一転し、春のお花見のころはとても天気は移ろいやすく、低気圧や高気圧が周期的に通るため天気や気温がとても変わりやすくなるのが特徴です。せっかくのお花見企画も、雨や風ですと台無しになってしまいます。こまめに気象情報を確認して、また臨機応変に予定を調整することにより、最高のお花見を演出しましょう。

tenkizu2何といっても、理想なのは移動性高気圧に覆われて日中は晴れて穏やかな陽気。お花見にはもってこいでしょう。ただし、この場合は朝晩を中心に放射冷却によりとても冷え込むことが多くなります。夜桜は秀逸なものですが、朝晩と日中の気温差がとても大きくなりますので、こまめに衣服を調節できるようにして風邪など召しませんように気を付けましょう。
高気圧が後退局面に入ると、南から暖かい空気が流れ込みはじめ、気温があがり夜の冷え込みもなくなります。
このタイミングではあまり寒さを気にせず夜桜の見物が可能です

メイストームという言葉もありますが、日本海で低気圧が急激に発達するときには全国的に風が非常に強まって、いわゆる「花ちらし」の雨風になってしまうこともあります。せっかく咲いた桜にとっては辛い試練ですね。

sakura3tenkizu

低気圧や春の嵐が通り過ぎると、再び一時的に冬型の気圧配置となり寒気が流れ込んだりして気温が下がり「寒の戻り」となります。冬季であれば一番空気が澄んだ状態で視界良好なクリアな青空となりますが、春は低気圧が大陸から黄砂やPM2.5などの微粒物質を巻きあげて日本に運んできてしまうため、あいにく空一面が霞んでしまうことが多いです。

冬の寒さが戻るパターンには、北から高気圧に覆われる「北高型」や南海上に前線が停滞する「菜種梅雨」など枚挙に暇がなく、桜の花が咲く頃のどんよりした空模様を「花曇り」と言ったり、肌寒い陽気様を「花冷え」と言います。咲いたばかりのサクラもお花見する人間も「こんなはずでは…」と戸惑いを感じるでしょう。

sakura4tenkizu3

お花見を楽しむための「花冷え」対策

ああ春爛漫!と嬉しくなった翌日に冬のように寒くなったり、強い北風が吹いたり、冷たい雨が降ったり。日が落ちてからの寒暖の差は、完全武装の冬よりも侮れません。

sakura_kisyou

お花見をたっぷり楽しむこと=外で長時間を過ごすこと。花冷え対策に持っていくと便利な「ちょっと1つ」を書きだしてみました。

ストール、マフラー、スポーツタオルなど
首回りを締めると体感温度が断然違います。

使い捨てカイロ
冷えてしまったお腹や背中、指先に。ゾクッときたら、首の後ろ・肘の内側・膝の裏・くるぶしなど、リンパの通り道に当てます。

厚手のコートやジャンパー
春らしい薄手の装いでも上着はしっかり目のものを。フード付きはさらにおすすめです。

温かい飲物
胃の腑から温めるのは、冷えに早く効く良案です。有名スポットでは自販機はすぐに空に。知らない場所ではコンビニを探すのも面倒。小さな魔法瓶や保温カバー付ペットボトルに温かい飲物を。